ここでは確定申告における譲渡所得の計算の仕方や、土地と建物の取得費が不明なときの譲渡所得の計算の仕方についてお伝えします。
また不動産の取得費が不明なときに、市街地価格指数を基に取得費を求め譲渡所得を算定する方法についても説明します。
目次
譲渡所得の計算の仕方
まずは不動産を譲渡したときの譲渡所得の計算の仕方をおさらいします。この譲渡所得の計算の仕方が基本中の基本となります。
この計算式が譲渡所得を計算する際の基本中の基本となる式です。
この譲渡所得に対して税率を乗じて納付税を求めます。
さて、この計算をするときに1つ問題になることがあります。それは取得費が不明なときです。
例えば、不動産を購入したときの売買契約書を紛失したり、何十年も前に不動産を取得していると不動産の取得価額がわからないことがよくあります。
また相続が発生したときに、親がその不動産をいくらで取得したかが相続人にはわからないことも珍しくありません。このようなときには相続が発生して空き家となった不動産を売却にするとき問題になります。
概算取得費5%で計算する方法
不動産の取得費が不明なときに用いられる最もオーソドックスな方法は、概算取得費を用いることです。
具体的には不動産の売却価格に5%乗じた金額を以って取得費とし譲渡所得を計算する方法です。
ただこの方法には1点、不動産の売却側にとっては困ったことが生じてしまいます。それは売却代金のうちの95%が売却益となり税金も多額になってしまう可能性があることです。
例えば不動産を3000万円で売却したとします。この場合、取得費は3000万円×5%=150万円となり、譲渡所得は2,850万円となります。この金額に対して税率を乗じます。
取得費が明らかなときに比べて、この譲渡所得2,850万円はあまりにも多額過ぎるのではと思えてしまいます。
市街地価格指数を基に計算する方法
譲渡した不動産の取得費を概算取得費とするのではなく、市街地価格指数を用いて計算する方法もあります。
市街地価格指数とは、一般財団法人不動産研究所が公表しているもので、全国主要都市内で選定された宅地の調査地点について不動産鑑定士が年2回価格調査を行い、指数化したものです。
この市街地価格指数を基に取得費を計算するときには、概ね次のような流れで計算します。
ステップ1 建物の取得費の計算
土地と建物を一括譲渡した際に各々の取得費が不明なときは、まず先に建物を着工建築物構造単価を基に選定する。着工建築物構造単価は一般財団法人建設物価調査会が発行している。
ステップ2 土地の取得費の計算
次に、土地の取得費は譲渡価額の総額から建物の取得費を控除し、土地の譲渡価額を算定したうえで、譲渡時に対する取得時の市街地価格指数の割合を乗じて価額を算定する。そのうえで、譲渡対価から建物と土地の取得費を控除して譲渡所得を計算する。
・譲渡日:平成9年8月
・取得日:土地及び建物 昭和59年9月
・建物の延べ面積:109㎡
・建築物単価:96,000円/㎡
・譲渡時の市街地価格指数:6,826
・取得時の市街地価格指数:5,241
※ 建物の減価償却費については、説明を簡略化するために考慮外とします。
譲渡所得:31,500,000円-(10,464,000円+16,151,432円)=4,884,568円
概算取得費との比較
上で市街地価格指数を用いた取得費の計算方法について例示しましたが、概算取得費5%で計算すると次のようになります。
以上のことから、上の例においては概算取得費を用いて不動産の取得費を計算した場合と市街地価格指数を用いて計算したときには譲渡所得が約25,000,000円違うことになります。※
※(10,464,000円+16,151,432円)- 1,575,000円≒25,000,000円
市街地価格指数を利用するときの注意点
先ほども簡単に触れましたが、市街地価格指数を基に取得費を計算する方法は常に認められているわけではなく、その利用は限定的と考えられています。
市街地価格指数を基に取得費を計算するときには、その土地が次の点を満たしていることは必ず事前に確認すべきです。
- 宅地であること
- 取得価額が不明であること
- 地価が市街地価格指数と同じ水準で推移していること
大切な点ですので繰り返しますが、市街地価格指数を基に取得費を計算する方法は安易な適用は回避すべきで、必ず税理士に相談することをお勧めします。