口座名義人に相続が発生すると、基本的にその口座の入出金はできなくなります。ですが、相続の後には葬式もあり、なんだかんだでお金が必要になることは正直なところ。このようなケースに備えて、遺産分割前の預金払戻制度があります。
遺産分割前の預金払戻制度を活用すれば、もし葬式前に手持ちの現金が足りなくても、少しは安心できるでしょう。
そこで今回は、この遺産分割前の預金払戻制度についてわかりやすく解説します。
目次
遺産分割前の預金払戻制度とは?
口座名義人が亡くなって、口座名義人の預金(相続預金)が遺産分割の対象となる場合には、遺産分割が終了するまでの間、相続人単独では相続預金の払戻しや入出金はできないことが原則です。
ですが、相続が発生したときには葬式を行う必要もあり、もちろん安くはない葬式費用を支払う必要がありますし、相続人の生活費も必要になることがあります。
こうした事情を踏まえ、遺産分割前の預金払戻制度が設けられました。
この相続預金の払戻制度によって、一定の上限はありますが、亡き口座名義人の口座から預金の払戻を受けることができます。この点が預金払戻制度のメリットと言えます。
遺産分割前の預金払戻制度を利用するには?
この遺産分割前の預金払戻制度を利用するためには、2つのケースが用意されています。
家庭裁判所の判断で預金の払戻ができるケース
家庭裁判所に遺産の分割の審判または調停が申し立てられている場合に、相続人はそれぞれ、家庭裁判所へ申し立ててその審判を得ることで、亡き口座名義人の口座から単独で払戻しを受けることができます。
この点は家裁の判断が絡む場合の要件になり、払戻を受けるためのハードルになると言えます。
家庭裁判所の判断なく預金の払戻ができるケース
上で説明したものは家裁の判断で預金の払戻が認められるケースでしたが、家裁の判断なく相続預金の払戻が認められる次のようなケースもあります。
各々の相続人は、相続預金のうち、口座ごと(定期預金の場合は明細ごと)に次の計算式で求められる金額について、家裁の判断なく、銀行から単独で払戻しを受けることができます。
例えば、
相続人が長女、次女の2名で、相続開始時の預金額が1口座の普通預金450万円のときには次のような計算になります。
遺産分割前の預金払戻制度には、家裁の判断が必要な場合と不要な場合の2つのケースがありますが、実際のところは家裁の判断なく利用できる後者の方が利用しやすいですし、払戻を受けるための事務的な負担も少なくなるはずです。
預金払戻制度を利用するために必要な書類
遺産分割前の預金払戻制度は、手元現金に不安のある方にとってはとても安心できる制度になります。
そして実際にこの制度を利用するためには、次の書類を準備して銀行へ提出する必要があります。
家裁の判断で払戻を受ける場合 |
・家庭裁判所の審判所謄本 |
・預金の払戻しを受ける方の印鑑証明書 |
家裁の判断によらずに払戻を受ける場合 |
・被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書 |
・相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明 |
・預金の払戻しを受ける方の印鑑証明書 |
遺産分割前の預金払戻制度を利用するための注意点
以上ここまで遺産分割前の預金払戻制度について、そのメリットや手続き、利用する場合の必要書類について説明してきました。
最後に遺産分割前の預金払戻制度の注意点についてお伝えします。
方もいらっしゃるはずです。その際にどのような書類が必要かについて、(下のリンク先で)銀行別にまとめました。ご興味のある方は是非、ご一読ください。