相続では個人が所有していた預金や不動産の財産だけではなく、借金などもすべて相続人が引き継ぐことになります。
借金も引継ぐということは、その借金が不動産などの財産よりも多額の場合には、結局、相続人の手元には何も残らないということにもなります。
こうしたときには、相続人にとって相続放棄が有効な選択肢です。
ここでは相続放棄の手続きに必要な相続放棄申述書の書き方と相続放棄の流れ、必要な書類について解説します。
相続放棄を検討中の方は、是非、一読ください。
目次
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人としての地位を放棄すること。
もう少し噛み砕いて言うと、相続放棄とは、相続人が相続人となることを辞めることで、相続人ではなくなるので、相続財産も引継ぐことはなくなることです。
相続が発生すると相続人は故人が保有していた財産や負債を引継ぎます。
ですが、相続人が相続放棄すると相続人ではなくなるので、被相続人が所有していた財産だけではなく、負債も承継することがなくなります。これが相続放棄です。
相続放棄すると、相続人ではなくなるので、資産は承継できませんが故人の借金を肩代わりすることもなくなります。
相続放棄申述書の書き方・記入例
この相続放棄ですが、相続放棄は家庭裁判所に対して申述する必要があります。
相続を放棄するときには、相続放棄申述書という書面に記入して家裁に提出することになります。
ここでは相続放棄申述書の書き方について説明します。
家庭裁判所と申請人の記入
それではさっそく、相続放棄申述書の書き方について説明します。
まずは相続放棄を申述する家庭裁判所と実際に相続放棄をする方の氏名を記入します。押印も忘れずに(1)。
申述する家庭裁判所(相続放棄申述書を提出する家庭裁判所)は、被相続人の最期の住所地にある裁判所です。
添付書類の欄には、戸籍など提出する添付書類にチェックします(2)。
相続放棄申述人と被相続人の記入
ここでは相続放棄をする方の氏名・本籍・住所、被相続人との関係(例えば、配偶者や子など)などを記入します(3)。
また被相続人の氏名・本籍・最後の住所、死亡日などを記入します(5)。
相続放棄する方が、未成年者や被後見人の場合には法定代理人の欄も記入します(4)。
相続放棄の申述の趣旨と理由の記入
相続放棄の趣旨については「相続の放棄をする」とのみ記入します(6)。
相続放棄をする理由は、様々な事情があると思いますが、最も当てはまるものにマルを付けます(8)。
故人の資産より負債の方が多額のときは5の「債務超過のため」にマルをつけましょう。
相続財産の概略については、申述書の記入時点でわかっている財産と負債の金額について記入すればOKです。
不動産の面積については毎年役所から送付される課税明細書などに記載されていますので、課税明細書等を確認して記入しましょう。
相続放棄の申述に必要な書類
相続放棄は、相続人になる予定の方がすることですが、配偶者や子など、誰が相続放棄をするかよって相続放棄の際に家裁に提出する必要書類が異なります。
まずは相続放棄に共通する必要書類は次の通りです。誰が相続放棄するかにかかわらず、必ず提出する必要があります。
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 放棄する方の戸籍謄本
次に、配偶者が相続放棄する場合や、子が相続放棄する場合など、相続放棄する方別に準備すべき書類についてお伝えします。
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
- 代襲者が相続放棄するときには、被代襲者(代襲者の親など)の死亡の記載のある戸籍謄本
- 被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
- 被相続人の子が死亡しているときには、その子の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
相続放棄の流れ
最後に相続放棄の流れを時系列で確認してみましょう。
この相続放棄の時系列からもわかるように相続放棄の手続きが完了するまでは、相続開始から概ね4か月です。
相続放棄申述受理証明書
相続放棄をすると、故人の借金を肩代わりするする必要はなくなります。この点は既にお伝えした通りです。
相続放棄後、もし故人の債権者から借金の返済を求められたときには、自身が借金の返済義務がないことを証明するために家裁から相続放棄申述受理証明書を取得して、債権者(銀行など)に提示すると良いでしょう。
相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明申請・謄本交付申請することで取得できます。
相続放棄のまとめ
相続放棄は相続開始から3か月以内に家庭裁判所に対して申述する必要があります。
申述するときには、相続放棄申述書に必要事項を記入し、必要書類を添付したうえで家裁に提出する必要があります。
相続放棄は、故人の資産よりも負債の方が過大のときには、特に有効な選択肢になります。