【実践】資産管理会社を活用した6つの節税スキーム

資産管理会社といえば富裕層や、上場会社の創業家、最近では上場準備会社の経営者が利用することが多くあります。

また不動産投資家が保有している不動産を会社(資産管理会社)に保有させるケースもあります。

不動産投資は、当初は個人として不動産を保有することが一般的かと思いますが、家賃収入が一定の水準を超えると、税金的な課題が発生するために、資産管理会社を活用することは珍しくありません。

なぜ富裕層や、ニューリッチ、不動産投資家が資産管理会社を活用するのかといえば、それはやはり節税のためといえます。

ここでは資産管理会社を活用した節税について解説します。

   目次

資産管理会社とは

資産管理会社の節税についてお伝えするまえに、まずは資産管理会社についてわかりやすく説明します。

「資産管理会社」とは、有価証券、自ら使用していない不動産(賃貸不動産など)、現金・預金等の特定の資産の保有割合が総資産の総額の70%以上の会社(資産保有型会社)やこれらの特定の資産からの運用収入が総収入金額の75%以上の会社(資産運用型会社)をいいます。

これが国税が示している資産管理会社の一般的なイメージです。

特定の資産とありますが、この特定資産には、株式などの有価証券や賃貸不動産以外に、例えば、ゴルフ会員権や貴金属、骨董品などの高価なものが含まれます。

これらの特定資産が総資産の金額の70%以上を占めれば、資産管理会社にあてはまります。

実際の資産管理会社は、株式や不動産を保有していることはもちろんですが、高価な美術品を保有していることは珍しくありません。

資産管理会社に不動産や有価証券、高価な美術品を保有させれば税金対策として有効に活用することができます。

国税が示している(既に説明したような)資産管理会社の定義はあるのですが、この要件を満たさなくても、会社を設立して「資産管理会社」として活用しいてる方々はたくさんいらっしゃいます。

このように資産管理会社は節税対策として有効に活用することができるのですが、資産管理会社を活用した節税対策について具体的に説明します。

資産管理会社を活用した節税の仕組み

法人を設立して、個人や一族の資産管理会社として活用するときには、次のような節税メリットを享受することができます。

1つづつ説明します。

資産管理会社を活用した節税1:受取配当等の益金不算入

受取配当等の益金不算入というルールがあります。

益金というのは、イメージ的には収益にあたるものです(益金≒収益)。

社長が保有していた株式を資産管理会社に移したときに配当金は資産管理会社が受け取ることになります。

通常、配当金は収益(益金)に計上されますが、益金に計上しないことになれば利益は小さくなります(受取配当等の益金不算入)。結果として、支払う税金も減少し節税することが可能になります。

資産管理会社にすれば、受取配当等の益金不算入を活用することができます。

受取配当等を益金不算入とするには、一定の要件があります。要件については顧問税理士に確認することをおススメします

資産管理会社を活用した節税2:所得の分散

資産管理会社を設立して、その会社の役員に親族を就任させます。役員ではなくても、親族を従業員して雇用することも可能です。

親族に給与・報酬を支払うことで経費を計上し、法人の利益を圧縮します。利益を圧縮した結果、支払う税金は少なくて済み節税することができます。

また親族に給与を支払いますので、親族全体としてのキャッシュフローを増加させることもできます。

資産管理会社を設立しないで、個人として資産を保有したときには、その資産が生み出す収益(現金)等は高い税率の相続で相続人が承継することになりますが、資産管理会社を活用すれば、相続開始前の早い段階で少しづつ相続人に財産を移すことが可能になります。

ちなみに、いろいろな資産管理会社を拝見しますと、ほとんどのケースで奥さんを取締役に就任させていることが多いように感じます。

資産管理会社を活用した節税3:給与所得控除

給与所得控除とは、個人の所得税を計算する前提として、給与から差引く金額のことです。

会社員の方が毎期年末調整をしていると確定申告をする必要はないので、給与所得控除を目にする機会はほとんどないと思いますが、給与所得から所得税を計算するときには一定の金額を必ず所得控除しています。

給与所得控除があると、課税所得が減少することになるので、支払う所得税も住民税も減少することになります。

親族全体として考えたときにも、親族全体のキャッシュ増加の要因になります。

資産管理会社を活用した節税4:損益通算

個人の場合、各所得ごとに課税方式が定められていて無制限に損益通算できないことがあります。

例えば、個人の場合、株式投資で損失を出したとしても、この損失と事業所得を合算して所得(利益)を圧縮することはできません。

法人の場合には、個人のような損益通算に関しての制限はありません。

様々な事業活動から生じた所得や損失を合算することができます。結果として損益通算は節税につながります。

資産管理会社を活用した節税5:繰越欠損金の活用

欠損金とは、イメージ的には過去に発生した赤字のことです。過去に生じて、翌期以降に持ち越されている繰越欠損金を、例えば当期に発生した利益(黒字)と合算できれば、当期の利益を少なくすることができます。

結果として、当期に生じた利益を減少させることができるので支払う税金も減少させることができ、節税につながります。

これも資産管理会社の繰越欠損金を活用した節税方法の1つです。

資産管理会社を活用した節税6:株式評価の引下げ

資産管理会社を活用する方の最大の目的の1つは、この株式評価の引下げでしょう。

株式評価についての細かい説明は省略しますが、株式を資産管理会社に保有させれば評価差額(含み益)のうち約35%強分の評価を下げることができます(※)。

※ 法人税率の改正で影響を受けることあります。

例えば、個人が上場会社の株式を保有していれば、(相続の時に)株式はほぼ時価で評価されることになりますが、(資産管理会社に上場株式を保有させ)自分が保有する資産管理会社の株式を非上場会社の株式として評価すれば、評価額をかなり下げることができます。

含み益分の評価を約35%下げることができるということは、含み益のうち約35%は相続税の課税対象にならないということを意味しています。

多額な含み益が生じる株式があれば、自分で保有するよりも、資産管理会社に保有させて(自分は資産管理会社の株式を保有した方が)間違いなく節税につながりますね。

資産管理会社を活用した節税のまとめ

不動産投資で収入が一定水準を超えたり、将来の相続対策、資産管理のために、資産管理会社の活用は有効な選択肢の1つになります。

ですので、多額の資産を保有する方は資産管理会社の活用を検討することは必須でしょう。

最後に資産管理会社を活用した節税方法についてまとめます。

資産管理会社を活用した節税
  • 受取配当金等の益金不算入
  • 所得の分散
  • 給与所得控除の活用
  • 経費の計上
  • 繰越欠損金の活用
  • 株式評価の引下げ(相続対策)

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