【図解】相続登記の必要書類と間違いやすい書類

相続が開始したときには、不動産について相続登記(名義変更)をすることになります。

ここでは相続登記をするときに登記申請書に添付する必要書類についてケース別に解説します。

   目次

連続した戸籍謄本とは

まずは「連続した戸籍謄本」の意味について説明します。連続した戸籍謄本は、相続登記の申請だけではなく、銀行手続きでも基本的には必ず提出を求められるので、相続手続きの前提としてその意味を知っておくべきといえます。

この連続した戸籍謄本とは、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本という意味です。

例えば、昭和10年1月1日に生まれた甲野甲太郎が令和1年12月31日に亡くなったとします。

そして甲野甲太郎には次のようなAからDまでの戸籍があったとします。

戸籍に記録されている期間
戸籍謄本A 昭和10年1月1日から昭和63年12月31日まで記録
戸籍謄本B 昭和64年1月1日から平成10年12月31日まで記録
戸籍謄本C 平成11年1月1日から平成30年12月31日まで記録
戸籍謄本D 平成31年1月1日から令和1年12月31日まで記録

上の図で説明すると、連続した戸籍謄本というのは、甲野甲太郎が生きていた期間(一日たりとも途切れることなく、昭和10年1月1日から令和1年12月31日まで繋がっている)のすべての戸籍謄本(AからD)という意味です(※)。

※ 実際の戸籍謄本は、結婚による転籍などがあるため、もっと複雑です。

ですので、相続登記や銀行手続きをするときには、AからDのすべての戸籍謄本を提出するのが原則で、戸籍謄本が1つでも漏れていると手続きはできないことになります。

通常、(出生してから亡くなるまでの)戸籍謄本は1通ということは稀で、ほとんどのケースで数通になります。

相続登記の必要書類:遺言書がない場合

遺言書がないときには、相続人による遺産分割協議で誰が不動産を相続するか決まることがほとんどのはずです。

ですので、(遺言書がない場合)遺産分割協議を前提とした相続登記の必要書類は次の書類です。

遺産分割協議による相続登記の必要書類

遺産分割協議書があるときの相続登記(遺言書がないとき)
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・相続人全員の戸籍謄本(※1)
・遺産分割協議書
・不動産を承継する相続人の住民票
・相続人全員の印鑑証明書
・固定資産評価証明

※ 相続人の戸籍謄本は、連続している必要はなく、現在のものだけでOKです。

固定資産評価証明は、登録免許税を算出するために必要です。

相続登記の必要書類:遺言書がある場合

遺言書があるときは、遺言書に基づいて相続登記又は遺贈による登記を申請します。

相続登記か、遺贈による登記かについては、後ほど説明します。

遺言による相続登記の必要書類

遺言書があるときの相続登記
・遺言書
・被相続人の戸籍謄本(連続している必要はなし)
・被相続人の住民票の除票
・遺言により相続する相続人の戸籍謄本(連続している必要はなし)
・遺言により不動産を承継する相続人の住民票
・固定資産評価証明
相続と遺贈
遺言書があるときには、登記原因を「相続」とする場合と「遺贈」とする場合があります。遺言書によって、「相続人」が不動産を承継するときには「相続」となり、相続人以外の人が不動産を取得するときには「遺贈」となります。これは、相続人以外の人が被相続人の不動産を「相続」することはあり得ないので、相続人以外の人が不動産を取得するときには「遺贈」を登記原因として登記申請することになります。この点は間違いやすいので注意する必要があります。

遺贈による登記の必要書類

上で説明した通り、相続人以外に遺贈したときには相続登記ではなく、遺贈による登記を申請することになります。

遺贈による登記を申請するときには、次の書類が必要になります。

※ 遺言執行者がいない場合を前提とします。

遺贈による登記の必要書類
・遺言書
・被相続人の連続した戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票
・権利証(または登記識別情報)
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明証
・遺言により不動産を取得する人(受遺者)の住民票
・固定資産評価証明

遺贈による登記では、相続人全員と受遺者が共同で(一緒に)登記申請することになります。

共同申請とは
不動産登記の申請形態には、単独申請という申請形式と共同申請という申請形式があります。この共同申請とは、登記をすることで不利益を受ける者と利益を得る者が一緒に申請する申請形式です。
遺贈による登記は、登記をすることで利益を得る受遺者と登記名義を失う被相続人(実質的には相続人)が共同で申請することになります。

司法書士に相続登記を依頼するかの判断基準

自分自身に十分な時間的余裕があり、さらに登記手数料を節約したいならば司法書士に依頼しないという選択もあるでしょう。

ただ司法書士に依頼しないときには、次のようなリスク(コスト)もあります。

・登記に必要な戸籍謄本を適切に収集できない
・収集した戸籍謄本を解読できない(昭和前半の戸籍謄本など、解読に時間がかかる戸籍謄本もあるため)
・遺産分割協議書など、添付書面の適法性を確認できない
・登記申請後、(ミスがあったときには法務局に出向いて)補正しなければならない

ですので、時間をかけずに迅速に相続登記を完了させたいならば、司法書士に依頼した方が間違いないでしょう。

司法書士に依頼することは「時間を買う」というイメージになります。

司法書士に相続登記を依頼するか否かの判断ポイントは次の2点です。

・相続人に時間的な余裕があるか否か
・費用を節約したいか否か

相続登記の必要書類で間違いやすい書類

ここまで相続登記の申請に必要な書類について説明してきましたが、(おそらく)相続登記の必要書類で最も間違いやすいのは、戸籍謄本の解読と収集だと思います。

昭和前半に作成された戸籍謄本は、手書きで作成されていて、慣れていないと解読するのにとても時間がかかります。

また戸籍謄本を解読できないと、必然的に、収集した戸籍謄本が「連続している」かどうかも判断できないことになります。

ですので、相続登記の必要書類では戸籍の解読と収集が最も間違いやすいでしょう。

その他、遺産分割協議書を添付するときにも、その遺産分割協議書が相続登記に必要な事項が漏れなく記載されているかの判断が(慣れていないと)間違いやすいといえます。