【要注意】相続登記の義務化とは?相続登記の未登記は罰則へ

相続があったときに、相続人は相続登記をすることが多かったように思いますし、実際に相続登記の依頼は多くありました。

ですが、これまで相続登記は決して相続人の義務ではありませんでした。相続があったとしても相続登記をしなくてもよかったわけです。

しかし今後は相続人にとって相続登記は義務になります。

そこでここでは、相続登記の義務化や相続人の申告制度、相続登記を放置したときの罰則などについてお伝えします。

   目次

相続登記が義務化される本当の理由は?

これまで登記するか否か相続人の任意だった相続登記が義務化される最大の理由は、所有者不明の土地が増えすぎたからです。

所有者不明の土地の面積は、九州の面積よりも広いと言われています。所有者不明の土地がそれほど広いと想像することは難しいのですが、これは本当のことのようです。

※ 平成28年度時点で所有者不明の土地は約410万ヘクタールです。

所有者不明の土地が増えるとどのような弊害があるかというと、例えば、土地等を収用できないため公共事業が進まなかったり、空き家が増えたり、または治安の悪化にもつながります。

所有者不明の土地が増えるとこうした弊害があるために、これまでは任意だった相続登記が義務化されることになりました。

相続登記の義務化はいつから?

義務化される相続登記ですが、具体的に義務化されるのは「いつからか」と疑問に思われる方も多いはず。

相続登記の義務化は「令和6年4月1日から」には正式に決定されています。

令和6年3月末までには義務化されないわけですが、まだ時間があるからと言って安心はしていられない。その理由については後程お伝えします(後段の「義務化される前に相続した不動産は対象になる?」をご覧ください)。

相続登記の期限と罰則は?

まずは義務化される相続登記の期限についてお伝えします。相続人は、いつまでに相続登記をしなければならないのでしょうか。

義務化された後、相続登記は「相続の開始」と「所有権を取得したこと」を知ったときから3年以内に法務局に登記申請する必要があります。

個人的な感想としては、「3年以内」という期間は長いと感じます。相続税の申告期限が相続開始から10か月ですし、これまで私が対応してきた相続登記は、軒並み相続税申告前に完了していました。

ですので、相続人は相続開始から余裕を持ちすぎずに相続登記の準備をすべきでしょう。

経験則から申し上げると、相続人の方が高齢者のときには、登記に必要な書類の準備や、特に、戸籍謄本の収集に時間がかかりますので、のんびりしているとすぐに時間が経過してしまいますし、できれば、相続人は戸籍謄本の収集も含めて相続登記を司法書士に丸投げした方が良いと思います。

注意点ですが、相続登記の義務化には罰則が設けられていて、相続登記をしなかったときには「10万円以下の過料」が課せられることがあります。

義務化される前の相続した不動産は対象になる?

相続人の方が疑問に思うのは、相続登記義務化の前に不動産を相続していた場合にはどうなるか、ということではないでしょうか。

結論からお伝えすると、義務化前に相続した不動産についても、その対象になります。

すなわち、相続登記の義務化の前に相続した不動産も相続登記義務化の対象になり登記する必要がありますし、罰則の適用もあります。

ですので、相続登記の手続きに余裕を持ちすぎると10万円以下の過料が課せられる可能性があります。

いずれにせよ、相続登記義務化の前に相続した不動産についても出来るだけ早めに登記することをお勧めします。

相続人申告登記とは?

遺言で相続財産を誰が相続するかが決まっていない場合などには、相続人全員で遺産分割協議をして、誰がどの財産を相続するかを決定する必要があります。

しかし、この遺産分割協議。必ずしも円滑に協議終了となるわけではありません。揉めにもめたうえ、10年経っても協議終了とならないことも稀にあります。

相続開始から10年経っても遺産分割協議がまとまらないと、相続登記をすることができずに、3年以内に必要な相続登記の義務を果たせないことになってしまいます。

そのようなときに、相続人申告登記を利用します。

この相続人申告登記とは、簡単にいうと、相続登記の予告登記で、相続の発生した不動産について未だ所有者は確定していないけれど、相続は発生していることを法務局に申告して登記しておくという新しい制度です。

期限内に相続登記ができないときには、相続人のうちの1人から法務局に申告して、相続登記を待ってもらうことができます。

ただし、相続人申告登記を活用したときでも、遺産分割協議で不動産を取得する相続人が確定したときには、相続登記をする必要はあります。

国による不要な土地の引き取り

相続登記は義務化されることになっていますが、相続財産に含まれる土地を相続したくない相続人もいらっしゃるはずです。

そのようなときのために、国が土地を引き取る制度もスタートします。

ここで詳細を説明するのは省略しますが、常に国が相続人の不要な土地を引き取るわけではなく、次のような要件があります。

要件
  • 法務大臣の承認が必要
  • 土地の上に建物が存在しない
  • 担保権や(借地権など)使用収益を目的とする権利が設定されていないこと
  • 通路その他の他人による使用が予定されていないこと

しかも、国に引き取ってもらうためには、10年間の管理に要する費用を国に納付する必要があります。

現所有者申告制度とは?@東京

補足になりますが、「東京」では令和3年4月から現所有者申告制度という新しい制度がスタートしています。

この現所有者申告制度とは、不動産の所有者の相続開始から3か月以内に相続登記ができないときに、不動産の現所有者の氏名や住所等を不動産所在地の都税事務所に申告しなければならない制度のことです。

この申告に基づいて固定資産税や都市計画税が課税されることになります。

ただこの申告をしたからといって、相続登記が不要となるわけではありませんので注意が必要です。

この現所有者申告制度についても忘れないように注意してください!

相続登記の費用 登録免許税

最後に相続登記をするときの費用(実費)についてお伝えします。

相続登記のするときには、法務局に登録免許税を納付する必要があります。

登録免許税は、固定資産税評価額に1000分の4を乗じた金額です。

例えば、固定資産税評価額が1億のときには40万円になります。

固定資産税評価額は、毎年市区町村から送付される課税明細で確認できますので、課税明細を確認してみましょう。