相続税については相続税法のなかに規定されていますが、相続分や相続の順位等の相続の法務に関することは、民法のなかで定められています。
そしてその民法が約120年ぶりに大改正され、相続に関しても一部改正されたり、新たな制度が設けられることになりました。
そこで今回は、改正の影響を受けた自筆証書遺言や保管制度について解説します。
目次
自筆証書遺言とは
まずは従来からある自筆証書遺言について確認します。
そして自筆証書遺言は、相続開始後、家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
自筆証書遺言のポイントは、必ず遺言書の全文、作成の日付や氏名を自署し、押印する必要がある点で、これ違反したときには遺言書は無効になることがあります。
この遺言書のメリットは作成にコストがかからないということですが(公正証書遺言は有料)、例えば自署しないなど、作成のルールを守らないときには遺言書が無効になるというデメリットがあります。
自筆証書遺言の改正点(財産目録)
従来、自筆証書遺言はその全文を自署しなければならないこととされていました。
ただ実際に遺言書を自署しなければならないとすると相当な手間がかかりますし、実際に高齢者が全文を自署するとなると相当な労力が必要で、自筆証書遺言の作成を妨げる要因になっていると指摘されていました。
自筆証書遺言の保管制度とは
新たに自筆証書遺言の保管制度が設けられました。
従来は自筆証書遺言を作成しても、紛失や相続人による隠ぺい、変造のリスクがあったり、遺言書作成の真正等を巡って紛争が生じることがありました。
そこでこうしたリスクを回避するために、法務局で遺言書を保管する制度が新たに設けられることになりました。
自筆証書遺言保管制度の手続き
- 保管制度を利用を申し出る申請書 ※
- 遺言書
- 遺言者の氏名、生年月日、住所及び本籍を証明する書類、その他法務省令で定める書類
※ 申請書には、遺言者の氏名、生年月日、住所および本籍、遺言執行者等がいるときにはその者の氏名・住所を記載します。
自筆証書遺言の保管制度(相続後)
相続開始後、相続に関係する相続人等は次のようなことを法務局に対して請求することができます。
- 相続人等は法務局に対して遺言書情報証明書の交付を請求をすることができる。
相続開始後、相続人等は遺言書を保管している法務局だけでなく、その他の法務局に対しても遺言書情報証明書の交付を請求することができます。
- 相続人等は法務局に対して遺言書の閲覧を請求をすることができる。
相続開始後に相続人等は実際に遺言書を保管している法務局に対して、遺言書の閲覧を請求することができます。
- 遺言書保管事実証明書の交付を請求することができる。
相続人等は、法務局(遺言書保管官)に対して関係する遺言書保管の有無や、関係する遺言書が保管されているときには、遺言書作成の年月日、遺言書保管所の名称、保管番号を証明した遺言書保管事実証明書の交付を請求することができます。
自筆証書遺言の改正点のまとめ
- 自筆証書遺言の財産目録は自署せずに作成することが可能となりました。
- 新たに遺言書保管制度が設けられました。
- 相続開始前であっても遺言書保管事実証明書の交付を請求することができます。
- 相続開始後、相続人等は遺言書情報証明書の閲覧・交付請求をすることができます。