民法が改正され、相続についても影響があります。例えば、自筆証書遺言の財産目録の記載の改正部分は既に施行済みです。
民法のうち、遺留分に関連した部分についても改正の影響を大きく受けます。
そこで今回は、遺留分侵害額の計算の仕方を中心に説明します。
目次
遺留分とは
まずは遺留分の意義について簡単に確認します。
したがって相続人は、相続欠格や廃除、相続放棄で相続権を失わない限り、最低限の相続分は保証されていることになります。
遺留分割合の計算の仕方
遺留分の意義について確認したところで、遺留分の割合について説明します。
この遺留分の割合については改正の影響を受けておらず、改正前と同様です。
念のため、遺留分の割合について次の表で確認します。
- 被相続人の直系尊属だけが相続人の場合は遺産の3分の1
- その他の場合(配偶者や子が相続人の場合)には2分の1
実際には、この遺留分割合にさらに相続分を乗じて遺留分を算定します。
配偶者の遺留分=1/2(法定相続割合)×1/2(遺留分割合)=1/4
子の遺留分=1/2(法定相続割合)×1/2(遺留分割合)=1/4
子Aの遺留分=1/3(法定相続割合)×1/2(遺留分割合)=1/6
子Bの遺留分=1/3(法定相続割合)×1/2(遺留分割合)=1/6
子Cの遺留分=1/3(法定相続割合)×1/2(遺留分割合)=1/6
遺留分の割合については、特に難しい計算はありません。
生前贈与と遺留分
改正前、遺留分の基礎を算定するときには、第三者に対する生前贈与は相続開始前1年間の贈与に限り計算上考慮することになっている反面、相続人に対する生前贈与については期間に制限なく全ての贈与が対象になっていました。
しかし今回の改正によって、この相続人に対する生前贈与は、相続開始前10年間の贈与だけが遺留分の算定上考慮されることになりました。
– | 改正前 | 改正後 |
相続人に対する生前贈与のうち遺留分の算定対象になる贈与 | 過去の贈与すべて | 10年以内の贈与(婚姻・養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与) |
・被相続人は相続開始15年前に甲に対し生計の資本としてA土地(2,400万円相当)を贈与(両者に加害の認識なし)
・被相続人は第三者の丙にB土地(4,000万円相当)を遺贈し、乙にC土地(8,000万円相当)を遺贈
・その他に相続財産はない。
したがって、改正の前後で遺留分が異なることになります。
遺留分侵害額の具体的計算例
次に遺留分侵害額の計算例について説明します。設例については、遺留分の算定で設定したものと同様とします。
遺留分侵害分は金銭債権化
最後に遺留分行使後について補足します。
(改正前は、遺留分減殺請求権(改正後は遺留分侵害額請求権と名称変更)を行使すると、減殺の対象となる財産が複数あるときにその財産は共有関係になっていました。)
しかし減殺請求の結果、対象財産が共有になると、その共有状態を解消するためには分割手続き等が必要になるなど手間がかかって不便です。
そこで改正後は、相続人は遺留分侵害額相当分を金銭債権として取得することになります。
例えば上の設例で、甲が丙に対して遺留分侵害額請求権を行使すると改正の前後で次のようになります。
400万円÷4,000万円=0.1
∴甲はB土地の10分の1相当を取得(甲と丙はB土地を1:9の割合で共有)
改正前は、甲は丙に対して400万円の金銭債権を取得するわけではなく、B土地の10分の1相当を取得することになります。
∴甲は丙に対して200万円の金銭債権を取得
改正後、甲は丙に対して遺留分の侵害額の請求として200万円の金銭債権を取得します(乙に対しては400万円の金銭債権を取得する)。
改正された遺留分全般についてはリンク先で説明しています。