自分の親の相続に関しては、誰でも当然、相続人になることができるとお考えの方が多いはず。
確かに、子であれば親の相続人になって当然と考えるのはやむを得ないかもしれません。
しかし、子が当然にして親の相続人になれるとは限らない。この点は誤解していた方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は相続人から外される相続欠格と廃除の違いや手続きについて解説します。
目次
相続の優先順位
親が亡くなった場合、その子には通常、相続権があります。これが大原則。
ですので、親が亡くなった場合、基本的には子は第1順位で相続することになります。
因みに配偶者は常に相続人になります。
相続人の順位 | |
第1順位 | 子(代襲相続あり) |
第2順位 | 直系尊属 |
第3順位 | 兄弟姉妹(代襲相続あり。再代襲はなし。) |
相続対策や、相続手続きをするうえで必ず押さえておきたい情報については次のリンク先をご覧ください。
相続権を失ってしまう相続欠格とは?
既にお伝えしたように、子は親を相続できるのが大原則です。原則ということは、例外があるということですね。
具体的には相続人が相続欠格にあたれば、当然にして相続権を失うことになります。例えば、親の相続に関して子が相続欠格に該当すれば、子は親を相続することはできなくなります。
この相続欠格とは、例えば、詐欺などによって被相続人(親など)に遺言をさせた場合などは、次に説明する廃除と違って、なんら手続きをすることなく、当然にして相続することはできなくなります。これを相続欠格と言います。
相続人が相続できなくなる事由(欠格事由)は次の通りです。
(相続人の欠格事由)
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
これら5つの欠格事由にあてはまったときには相続人は、相続人として相応しいとは言えず、当然にして相続することができなくなります。次に説明する廃除とは違って、なんら手続きは要りません。
相続人から除外できる相続廃除とは?
図らずも、相続欠格に該当してしまった場合は当然にして相続権を失います。したがって、相続財産を受け継ぐことはできません。
相続の欠格に類似したものとして、相続廃除という制度があります。
この相続廃除は、欠格と違って、相続人は当然にして相続権を失うということはありません。
廃除とは、例えば、子が被相続人(親など)に対し、虐待、著しい非行などがあった場合に、被相続人が家庭裁判所に請求することによって、相続権を奪うことができる制度のことです。
この家庭裁判所に対する廃除の請求は遺言によってもすることができます。
(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
推定相続人に、廃除に該当するような事由があったときには被相続人は廃除の請求をして、その相続人を相続から除外することができます。
また廃除は、欠格と違って、いったん家庭裁判所に請求しても、その後その請求を取り消することもできます。
相続人を廃除するための手続き
推定相続人を廃除するためには、家庭裁判所に対して請求をする必要があります。
そして廃除の手続きをするときには次のような書類が必要です。
- 廃除の申立書
- 申立人の戸籍謄本
- 被相続人の戸籍謄本
- 推定相続人の戸籍謄本
- 言による廃除の場合には、遺言書の写し
まとめ:欠格と廃除の違い
最後に、相続欠格と廃除の違いを図でまとめてみます。
– | 相続欠格 | 相続廃除 |
手続き | 不要 当然にして相続権を失う |
家裁に対する請求又は遺言による廃除の意思表示 |
遺贈 | 受けることができない | 受けることができる |
取消の可否 | – | 可 |
(ポイントは)相続人が欠格事由に該当すれば、なんら手続きをすることなく当然にして相続することができなくなるのが相続欠格で、相続人の相続権を奪うために家庭裁判所に請求する必要があるのが廃除です。