鳩山邦元総務相の相続財産7億円申告漏れの真相

国税側は「高額かつ多額の申告漏れがあると認められるものを中心に、預貯金、有価証券などの金融資産の把握」に重点を置いて税務調査するという姿勢を明言しています。

これは国税庁が毎年公表する事務年報のなかで明言されていることです。

国税庁がそうした姿勢を明言しているなかで、鳩山元総務相に次のような申告漏れが発覚し、ニュースになりました。

鳩山元総務相の相続財産申告漏れ

2016年に67歳で死去した鳩山邦夫元総務相の遺族が東京国税局の税務調査を受け、相続財産について約7億円の申告漏れを指摘されたことが関係者への取材でわかった。政治団体への貸付金を相続財産に含めないなどのミスがあったという。過少申告加算税を含む追徴課税は2億数千万円で、すでに修正申告したとみられる。
 鳩山氏が代表を務めていた資金管理団体「新声会」の収支報告書によると、16年6月の死去の時点で、鳩山氏から6件計約4億5千万円の借入金があった。故人が会社や個人などに資金を貸し付けていた場合、原則として相続財産の対象となる。だが関係者によると、鳩山氏の遺族らは、相続税の申告時に新声会への貸付金を計上していなかったとみられる。(朝日新聞2020年1月13日)

このような故人が保有していた貸付金(債権)を相続人側が把握するのはとても難しいというのが現実です(通常、相続人は故人が誰に貸付金を保有しているかは知らないでしょう)。

契約書があれば貸付金の存在はわかるかもしれませんが、自分自身が代表を務める会社や団体に貸し付けるときは契約書は作成しないケースが圧倒的に多い。

今回は、資金管理団体の収支報告書に借入金の計上があったことから「貸付金」の存在が発覚したようですが、専門家でもない一般の方(相続人)がそこまで(故人が代表を務めていた団体の帳簿を調査してまで)故人が保有していた財産を把握するのは難しいのではないかと思います。

鳩山元総務相の相続については税理士も関与していたと思いますが、故人が代表を務めていた会社や団体・組織の帳簿等をどこまでリサーチするかは各税理士の判断によると思います。

通帳で過去何年かの現預金の流れを確認することはあります。

税理士側には相続財産についての「調査権限」はないので、相続人に対して相続財産の有無についてのヒアリングをして「相続財産はこれ以外にない」と言われれば、それ以上追求できないという現実もありますし、仮に故人が代表を務める関係団体等の帳簿の提出を依頼しても、拒否されればそれ以上調査するのはとても難しい。

こうした事態に備えて、税理士側は相続人から確認書的な書面を取得しているはずです(例えば、相続人が把握している相続財産についての情報は全て税理士に提供している等を記載した書面に押印して頂く)。

税務調査の対象となる相続財産の目安については、次のリンク先で説明しています。ご興味のある方は、ご覧ください。

税務調査の対象になる相続財産の目安は?国税庁公表データを分析