富裕層にとっては相続の税務調査は気になるはず。また富裕層以外の方の遺族にとっても未経験の税務調査は不安なところだと思います。
※ ここで掲載している図表等は国税庁が公表している国税庁レポート、事務年報、統計年報の3つを基に作成しています。
目次
相続税法改正による相続税申告件数の変化
ご存知のように相続税法の改正で平成27年1月1日以降から基礎控除額の引き下げや相続税率の上昇がありました。
そこで相続税法改正の前後で、相続税の申告件数にどのような変化があったかを確認しました。
相続税法改正前後の平成26年と27年を比較して、相続税の申告割合を比べてみます。
– | 平成26年度 | 平成27年度 |
相続の件数 | 1,273,004人 | 1,290,444人 |
相続税申告件数 | 56,239人 | 103,043人 |
相続税申告割合 | 4.41% | 7.98% |
相続税の税務調査件数の推移
次に直近5年間の相続税の税務調査件数の推移を確認しましょう。
平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 |
12,210件 | 11,909件 | 12,406件 | 11,935件 | 12,116件 |
毎年の税務調査(実地調査)は、概ね12,000件前後で推移しています。
税務署側のマンパワーが急激に増えることも減ることもないことを考えると、今後も12,000件前後で推移すると予想できます。
相続税の税務調査の割合
税務調査の件数 ÷ 実際の相続税申告件数を計算すれば、実施された税務調査の割合を算定することができます。
相続税の申告期限は相続開始から10か月以内ですので、税務調査は基本的に申告の翌年以降に実施されると考えることができます。
平成28年の税務調査は、平成27年以前の相続税の申告分と想定できるので、ここでは過去3年分の相続税申告件数平均値を基に税務調査割合を試算します。
平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平均値 |
54,421件 | 56,239件 | 103,043件 | 71,234件 |
平成28年度の税務調査件数を平成25年から平成27年の3年間の申告件数平均値で割ると、税務調査割合は約17%になりました。
相続税の税務調査の対象になる相続財産の目安
相続人が気になるのは、いくら以上の相続財産があれば、税務調査の対象になりやすいのかということではないでしょうか。
そこで税務調査の目安となる相続財産を推定してみます。
下の表は、被相続人がどれくらいの相続財産(課税価格)を保有していたかを表すものです(平成28年)。
課税価格階級 | 被相続人の数 | 累計割合 |
30憶円超 | 91人 | 0.08% |
20憶円超 | 117人 | 0.19% |
10憶円超 | 663人 | 0.82% |
7億円超 | 848人 | 1.62% |
5億円超 | 1,478人 | 3.01% |
3億円超 | 4,482人 | 7.25% |
2億円超 | 7,243人 | 14.09% |
1億円超 | 28,032人 | 40.56% |
5,000万円超 | 53,436人 | 91.03% |
5,000万円以下 | 9,490人 | 100% |
合計 | 105,880人 | – |
この表の見方は、例えば、平成28年は課税価格30億円超の被相続人は91人だったということです。
累計割合は、申告した被相続人に占める割合のことです。例えば、相続税を申告した人のうち課税価格が30憶円超だった方の全体に占める割合は0.08%で、5憶円超の方は全体の3.01%だったことを示しています。
この表から見るに、前述した税務調査割合17%に近くなるのは、課税価格2億円超(14.09%)です。
ですので、相続税の税務調査の対象になりやすいのは課税価格2億円超の相続案件と推測することができます(2億円未満の相続は数が多すぎて埋没する可能性があるということです)。
税務調査の状況については、次のリンク先でも解説しています。ご興味のある方は、ご覧ください。