日本の相続税が高いならば、例えば、他の国に住居を移転して、日本の相続税から逃れるという発想を持つ富裕層は必ずいらっしゃるはずです。
また既にご存知の方もいらしゃると思いますが、「終身旅行者」という言葉もあります。
この終身旅行者とは、定期的に居住する国を移り変わり、各国での税金を免れる人達のことです。
いずれにしても国によって税制が異なりますし、当然、相続税の税率も違い、相続税がない国もあります。
そこで今回は、アジアの国を中心に海外の相続税について紹介します。
ご興味のある方はご参考ください。
目次
アジアの国の相続税はどうなっているか?
相続税が改正されたこともあって、最近は特に相続税について関心が高いと思いますが、相続税の税率までインプットされている人は少ないかと思います。
しかも他の国の相続税に関して知っている人はさらに少ないかもしれません。
そこで今回は他の国の相続税に関して、ざっくりとまとめてみました。せっかくなので、相続税の補完税である贈与税についても記載します。
香港とシンガポール以外に、インドネシア、ベトナムの相続税、贈与税は?
以前の記事で香港・シンガポールの相続税・贈与税については「なし」と記載しました。ない、という状況は今も変わってません。
また、インドネシアの相続税・贈与税も「なし」です。香港・シンガポールも相続税はないのですが、この2つの国とは背景が違います。
そもそも香港・シンガポールには、相続税・贈与税という制度が以前は存在していました。しかし、廃止されて現在では「なし」です。
反対に、インドネシアはそもそも相続税とか贈与税の制度がない、整備されていません。インドネシアで今後、相続税と贈与税の制度が整備されるかは不明です。
それではベトナムの相続税はどうでしょうか。
実はベトナムも相続税・贈与税は「なし」です。相続税はないけれど、所得税として課税されます。一時所得として、10%課税されるようです。
その他、韓国、中国、台湾、インド、マレーシアの相続税と贈与税についてはリンク先の記事で一覧にしてます。
その他、世界の国々の相続税は?
せっかくですので、その他世界の相続税についても簡単に説明します。
アメリカの相続税(遺産税)
アメリカでは2010年に遺産税は一旦廃止されましたが、2011年に基礎控除500万ドル、最高税35%で復活しました。
この復活は2012年までの時限措置でしたが、2013年以降については2012年米国納税者救済法により、基礎控除500万ドルは維持しつつ最高税率を40%へ引き上げることなりました。
2018年1月以降は、2025年までの時限措置として、基礎控除額が2倍の1,000万ドルに拡大され、さらに毎年インフレ調整による改訂が行われることになっています(以上、財務省webサイト参照)。
南アフリカ共和国の相続税
南アフリカ共和国の相続税は350万ランド(≒2,500万円)を上回る額の純遺産に対しては、20%の相続税が課税され、3,000万ランドを超える部分に対しては25%が課税されます。
350万ランドの基礎控除が適用され、負債、公益機関への遺贈および配偶者へ相続される資産についても控除対象となります。
※ ランドは約7円程度です。
イタリアの相続税
イタリアは被相続人と相続人との関係(何親等かによって)相続税率が異なります。
1.配偶者および一親等の親族が相続する場合:相続人ごとに4%で相続額のうち100万ユーロが控除されます。
2.3親等までの傍系親族と4親等までのその他の親族が相続する場合:相続人ごとに6%。兄弟姉妹の場合、相続額のうち10万ユーロが控除される。
3.その他の個人が相続する場合:8%が控除されます。
いずれにしても税率は日本に比べて相当低くなっています。
アラブ首長国連邦(UAE)の相続税
アラブ首長国連邦に相続税制度はありません。遺言状のない相続は、イスラム聖法に基づいて対処されます。
シンガポールの相続税
シンガポールの相続税は、従来、シンガポール国籍を有する個人が亡くなった際に、被相続人が保有する資産に対して5%または10%の税率で相続税が課せられていましたが、2008年2月15日以降廃止されています。
イスラエルの相続税
イスラエルに相続税は存在しません(2014年3月時点)。
タイの相続税
従来相続税と贈与税はありませんでしたが、2016年2月1日から相続税が導入されました。1億バーツ超の相続税課税対象資産を相続した相続人は10%、相続人が直系尊属または直系卑属の場合には5%の相続税が課税されることになります。
相続税の対象となる資産は、次のとおりです。
・不動産
・タイの有価証券取引法で定義された有価証券
・被相続人が引き出す権利を有していた預金等
・登録自動車
・その他の法令で規定する資産
相続税の課税対象となる人は、(1)タイ国籍を持つ者、(2)タイ国内に移民法に基づく住居を持つ外国人、(3)タイ国内の財産を相続する外国人が相続税の課税対象になります。