日曜ミステリーなどを見ていると、そのなかで登場人物の「遺書」がでてくることがあります。遺書に「マンションAは長男に相続させる」と記載しても、そのマンションAを長男が相続できるとは限りません。遺書と遺言は違うからです。
ここでは遺言書の種類と書き方等について解説します。
ちなみに、遺書で「不動産を長男に相続させる」などとを書いたとしても、その遺書が法律で求められている要件(例えば、押印など)を満たしていなければ法律上の効果はありません。つまり、長男は不動産を相続できないということになります。
目次
遺言書3つの種類
まず遺言書と遺書を比較すると、冒頭に記載した遺書は、その作成にルールがなく自由に書くことができます。基本的に遺書にはどんなことを書いてもかまいません。
遺言書はその作成に一定のルールがあって、そのルール通りに作成しないと法律的な効力は発生しません。
例えば、「マンションAを長男Bに相続させる」と記載したとしても、遺言書作成のルールに遺言書を作成しないと、長男BはマンションAを相続することができなくなります。
遺言書の主な種類として、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。
各遺言の作成方式の主な違い
– | 証人等の要否 | 遺言の保管 | 検認の要否 |
自筆証書遺言 | 不要 | 遺言者 | 要 |
公正証書遺言 | 証人2名以上の立会 | 原本は公証役場 | 不要 |
秘密証書遺言 | 公証人1名、証人2名以上の前に提出 | 遺言者 | 要 |
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言は、主に証人や検認、遺言書を誰が保管するかに違いがあります。
自筆証書遺言の書き方と留意点
自筆証書遺言の場合は、自ら文章を記載して作成年月日も記載し押印する必要があります。間違っても、MSの「Word」では作成しないで下さい。遺言が無効になります(必ず自筆する必要があるからです)。
また年月のみの記載や年月吉日という表現も絶対に避けなければなりません(吉日などの表現では、具体的にいつ遺言書を作成したかわからないからです)。
さらに自筆証書遺言の場合は家庭裁判所が遺言の内容等を確認する(検認)手続きが必要です。
自筆証書遺言は次のように一部改正(平成31年1月13日施行)されています。
この改正で、自筆証書遺言は全文を自署する必要はなくなりました。
公正証書遺言の書き方と留意点
公正証書遺言の場合は、公証役場で遺言書を作成します。遺言をしたい人は公証役場に出向いて、公証人に遺したい遺言の内容を伝えます。その内容を公証人が書き記し遺言を作成します。
自筆証書遺言と違って、遺言書作成の際に証人2人以上の立会いが必要です。
公正証書遺言の作成にはコストがかかるというデメリットがあります。ただそれほど大きな金額ではありません。
自筆証書遺言は作成の仕方で失敗すると、例えば、被相続人の希望通りに相続させることができなくなるというデメリットがあります。
ですが、公正証書遺言は遺言の作成に公証人が関わることになりますので、遺言者の希望が実現できなくなる等のリスクは回避できます。 補足として秘密証書遺言について簡単に説明します。 秘密証書遺言は、自筆証書遺言と違って、MSの「Word」でも作成することができます。検認手続きが必要という点は自筆証書遺言と同様です。 遺言の内容を秘密にできるというメリットがある反面、紛失する可能性があるというデメリットもあります。 民法で相続に関連する部分が改正されました。その改正の1つとして自筆証書遺言の保管制度という制度が新たに創設されました。自筆証書遺言を検討するときは、この保管制度も合わせて検討することをお勧めします。保管制度の詳細は次のリンク先で説明しています。
公正証書遺言作成のサポートを弁護士や司法書士に依頼するときには、依頼者は1度だけ公証役場に伺うことになります。公証人との事前打ち合わせや、遺言書の内容の調整は全て公証人と弁護士または司法書士等で行います。
秘密証書遺言の書き方と留意点