相続税の申告のときにも、相続登記の手続きのときにも、遺産分割協議書が必要になることがあります。
ただ遺産分割協議書の作成でミスをすると、そもそも正式に遺産分割協議がなされたかを証明するものがありませんし、法的に遺産分割協議が有効なのか不明になります。
このようなときには、相続登記をしても申請が法務局によって却下されることがありまし、相続人間で争いが生じることもあります。
そこで今回は、遺産分割協議書の書き方や、注意点について解説します。
遺産分割協議で失敗すると、すべての相続手続きをやり直すなど、二度手間が生じてしまい膨大なコストが発生することがあるので気を付けたいところです。
目次
遺産分割協議とは
遺産分割協議の最大のポイントの1つは、「相続人全員が参加」する必要があるという点です。
したがって、内縁の妻との間に認知された子がいるにもかかわらず、その子を除外してなされた遺産分割協議はなんら効力がないということになります。
5つある遺産分割の方法
遺産分割についてですが、遺産分割の方法には次の5つがあります。どの遺産分割の方法が相続人にとってベストな選択になるかは、状況によって異なります。
そこでまずは5つの遺産分割方法について説明します。
前提として、6,000万円相当の家と土地があるとします。
- 現物分割:配偶者は家、子は土地を相続するような分割方法
- 換価分割:家と土地を売却し、売却代金を均等に分割するような分割方法
- 代償分割:配偶者が家と土地を取得し、配偶者が子に現金3000万円を支払うような分割方法
- 代物分割:配偶者が家と土地を取得し、子に対し3000万円相当分の現金以外の財産を譲渡するような分割方法
- 共有分割:配偶者と子が家と土地を、相続発生後に共有するような分割方法
遺産分割協議書の書き方
次に遺産分割協議書の書き方について説明します。
遺産分割協議書のサンプルを基に重要なポイントを端的にお伝えします。
遺産分割協議書のサンプル
最後の住所 何県何市何町何丁目何番何号
被相続人 乙野乙郎 (平成何年何月何日死亡)
上記の相続人全員は、被相続人の遺産について協議を行った結果、次の通り分割することに合意した。
1.相続人Aは次の遺産を取得する。
【土地】
所 在 何市何町何丁目
地 番 何番何
地 目 宅地
地 積 100.00㎡
【建物】
所 在 何市何町何丁目
家屋番号 何番何
種 類 木造
構 造 瓦葺2階建
床 面 積 1階 55.00㎡
2階 55.00㎡
2.相続人Bは次の遺産を取得する。
【現金】 金5,000,000円
【預貯金】 ○○銀行○支店 普通預金 口座番号00000000
○○銀行○支店 定期預金 口座番号00000000
3.Aは、第1項記載の遺産を取得する代償として、Cに平成何年何月何日までに、金1,000万円を支払う。
4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人Aがこれを取得する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したため、本協議書を何通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。
平成何年何月何日
【相続人Aの署名押印】
住所
氏名 実印
【相続人Bの署名押印】
住所
氏名 実印
【相続人Cの署名押印】
住所
氏名 実印
・遺産分割協議書は相続人分作成し、各自保管する
・実印を押印し、印鑑証明書を添付する(認印は不可)
・他の相続人の遺留分を侵害しないように注意する
・遺産分割協議書が複数枚になるときには契印する
遺産分割協議書の最終チェックリスト
遺産分割協議書の作成でミスをすると分割協議のやり直しや、相続登記の申請が法務局で却下されるなど二度手間が生じてしまい、膨大な時間のロスが発生します。
遺産分割協議書の作成で不要なミスは避けたいものです。
ここでは遺産分割協議書を作成する際の10個のチェック項目をお伝えします。
- 相続人の全員が遺産分割協議に参加しているか。
- 相続財産が漏れなく遺産分割の対象になっているか。
- 他の相続人の遺留分を侵害していないか。
- 不動産などは特定できるように、地番、所在地、家屋番号など詳細に記載されているか。(上記1.参照)
- 預金などは特定できるように口座番号まで記載されているか。(上記2.参照)
- 事後的な紛争を防止するために、下線4.は記載されているか。(上記4.参照)
- 署名は自筆されているか。
- 相続人の数の遺産分割協議書を作成し、各自実印を押印しているか。
- 印鑑証明書は添付したか。
- 遺産分割協議書が複数枚のときは契印したか。
チェック項目3つ目の遺留分の詳細については、リンク先の記事で確認できます。
民法改正で自筆証書遺言の方式等が変更になりました。