相続を考える上で、養子縁組は相続対策の1つになります。詳細は後述します。
相続対策として養子縁組を考える以外でも、例えば、家を継ぐために養子縁組をすることもあります。
家を継ぐ者がいなければ、いずれその家の「名字」も消えてしまうこともあります。実際に、相続対策以外の養子縁組も意外に多いように感じます。
そこで今回は養子に関連して、普通養子と特別養子の相続対策上の違いなどについて解説します。
目次
普通養子と特別養子の法律上の違い
養子には普通養子と特別養子の2つがあります。
まずは普通養子と特別養子の民法上の違いを簡単に説明します。
この特別養子の場合は、養親と養子に年齢制限があります。
特別養子の場合、(特別養子縁組が成立するための要件として)養親は25歳以上で養子6歳未満であることが原則です。
これに対して普通養子の場合は、(普通養子縁組が成立するための要件として)養親は成年に達していることが必要です。
また特別養子の場合の養親は配偶者がいなければなず(養親となる人は結婚していなければならない)、夫婦共同縁組が原則です。これに対して、普通養子の場合は単独でも養親になることができます(養親となる人の配偶者とは養子縁組をする必要はありません)。
また特別養子の場合は、普通養子の場合と違って、6ヶ月以上の試験養育期間が必要です。
そして、普通養子の場合は、特別養子と違って、実親との関係も継続します(普通養子縁組の場合には、養子縁組をしたとしても実の親との親族関係は終了しませんが、特別養子縁組の場合には実の親との親族関係は終了します)。
これはどういうことかというと、実親に相続が発生した場合、普通養子は実親の相続人になることができるということです。特別養子の場合は、実の親に相続が発生したとしても実親の相続人にはなることができません。
また「特別養子は子の利益のために必要なとき」等の理由がなければ縁組は認められないという特徴があります。この点は普通養子と特別養子の決定的な違いです。
普通養子と特別養子の違い一覧
– | 普通養子 | 特別養子 |
縁組の条件 | 特になし | 実父母による監護が著しく困難等の理由が必要 |
監護期間 | 不要 | 6か月以上の監護期間必要 |
養親の年齢 | 20歳以上 | 原則25歳以上 |
養子の年齢 | 養親より年下 ※ | 原則6歳未満 |
実親との関係 | 継続 | 終了 |
共同縁組 | 不要 | 原則 要 |
※ 尊属を養子とすることもできません。
相続税上の普通養子の取り扱い
次に相続税を算定するうえで養子の取り扱いはどうなっているかということについて説明します。
まず相続人が多ければ基礎控除額が増えます。ということは、養子縁組をたくさんして相続人を増やし、「基礎控除額を増やし相続税を減らす」という単純な発想が誰でも思いつくはずです。
ところが日本では、養子の数を増やして相続税を節税するという方法は基本的に難しい。
被相続人に実の子がいる場合には養子は1人しか基礎控除額の計算の際に相続人としてカウントできないことになっているからです。
被相続人に実の子がいない場合は、(養子縁組をすれば)養子を2人まで相続人として基礎控除の計算の際にカウントすることができます。例えば、養子2人以外に相続人がいないときは基礎控除額は4,200万円になります(基礎控除額4,200万円=3,000万円+養子2人×600万円)。
- 被相続人に実子がいる場合には養子は1人分まで基礎控除額に算入できる
- 被相続人に実子がいない場合には養子は2人分まで基礎控除額に算入できる
相続税上の特別養子の取り扱い
次に相続税を算定するうえで特別養子の取り扱いはどうなっているか説明します。
したがって理論的には特別養子を増やして基礎控除額を増加させることで、相続税を軽減させるという方法も可能です。
ただ特別養子縁組をするには家裁の審判が必要なっているので、この点は特別養子縁組をするうえでの高いハードルになります。
- 普通養子と違って特別養子の場合には、基礎控除額の算定上、人数に制限はない
普通養子と特別養子のまとめ
- 基礎控除額を算定するうえでは、人数に制限のない特別養子の方が(理論上は)有利(基礎控除額を大きくすることができるので相続対策としての効果は大)
- 普通養子の場合には、最高でも2名分までしか基礎控除額に算入されない
- 養子本人からすれば、実親の相続も可能な普通養子の方が有利(普通養子は実の親の相続人にも、養親の相続人にもなることができる)
- 特別養子縁組をすると、実の親の相続人になることはできない。