相続対策のためだったり、家系を守るためだったり、実親の事情があったりなど様々な理由で養子縁組を検討する方はいらっしゃるはずです。
養子縁組をしたとしても、その養子縁組後の相続がどのようになるかを正確に理解していない方は意外に多いように感じます。
そこで今回は、養子縁組と相続に焦点をあてて詳しく説明します。
ほとんどの方は養子縁組という言葉は耳にしたことがあると思いますが、養子縁組をした場合に養親が亡くなった後の相続関係はどうなるのか?この点についても解説します。
目次
相続人の順位
まず最初に相続人の順位についておさらいしましょう。相続人の順位について既にご存知の方はこの部分は読まなくても構いません。
相続人の順位というのは、相続が発生したときに(例えば、父親が亡くなった場合など)、誰がどの順番で相続人になるのかということです。
相続人の順位 | |
第1順位 | 子(代襲相続あり) |
第2順位 | 直系尊属 |
第3順位 | 兄弟姉妹(代襲相続あり。再代襲はなし。) |
次に上の図の見方について説明します。
まず配偶者と一緒に(被相続人の)子が相続人になります(第1順位)。もし被相続人の配偶者も既に亡くなっているときには、子だけが相続人になります。
もし被相続人に子がいなければ、配偶者と被相続人の直系尊属(例えば、被相続人の父母や祖父母)が相続人になります(第2順位)。もし配偶者がいなければ、被相続人の直系尊属だけが相続人になります。
そして、もし被相続人に子や直系尊属もいなければ、配偶者と兄弟姉妹が相続人になります(第3順位)。配偶者が既に他界していれば、兄弟姉妹だけが相続人になります。
相続人はこのような順番で、誰が相続するのかが決まることになります。この相続人の順位についてはご存知の方も多いはず。
※ 代襲相続についてはリンク先で解説していますので、ここでの解説は割愛します。
普通養子の相続
養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組という2つのタイプがあります。もし2つの養子縁組の違いについてご興味のある方はリンク先の記事をご覧ください。
本題に戻して、普通養子の相続について説明します。普通養子の相続についてはキッチリと整理できていない方も多いのではないでしょうか(この部分では普通養子を前提として説明します)。
まず養親の相続を考えた場合、言うまでもなく養子は養親の「子」なので、養親の相続に関して第1順位の相続人になります。この点を理解するのは難しくないはず。
養親に他にも子(実子など)がいる場合には、その子と一緒に養子は相続することになります。
ですので、養子は養親の相続人にもなることができますが、実親の相続人にもなることができます。
また実親側に兄弟がいれば、その兄弟の相続人にもなることができます。
このような点は普通養子縁組の特徴的なところです。
繰り返しになりますが、普通養子縁組をしても実親との親子関係は消滅しないので、養親側の相続人になることができるだけでなく、実親側の相続人にもなることができます。
また養子は養親の「子」なので、養親の実父母の相続については養親を代襲相続することができます。
特別養子の相続
同じ養子でも普通養子と特別養子の場合の相続は全く異なります。
普通養子の場合と同様、特別養子は養親の相続人になることができます。養親にしてみれば特別養子も「子」ですので、養親の相続人になることができるのは当然のこと。
特別養子縁組の場合には、実親との親子関係が消滅することになるので、養子は第1順位の「子」にはあたらず、実親の相続人になることはできません。この点は、普通養子との決定的な違いになります。
ですので、特別養子の場合には実親側の相続に関して相続人になることはなく、相続対策などを検討する必要もないことになります。
養子縁組と相続のまとめ
・普通養子は養親の相続人になることができるのはもちろん、実親の相続人になることもできる。
・特別養子は実親との親子関係は消滅するため実親の相続人になることはない。養親の相続人にはなることはできる。
・普通養子と特別養子との大きな違いは、実親との親子関係が(医学上ではなく、法律上)消滅するかどうかにあって、この点に違いがあるので実親の相続人になることができるか否かの違いが生じる。
補足になりますが、相続税の基礎控除額を算定する際に養子の数は制限を受けることになります。基礎控除額と養子の数の制限についてはリンク先で詳しく解説しています。